ドメーヌイヅミのワインについて

 



栽培地概要


「・・・風化産物ノ由来セル岩石ヲ其母岩ト謂フ、而シテ風化産物ノ醇化シテ作物若クハ林樹ヲ生育セシメ得ルニ至リタルモノヲ土壌ト謂フ、陸上植物カ接触スル空間ヲ其立地ト名ツク、立地ハ大気ノ下層ト土壌トニヨリテ代表セラル。」


 長い引用になりましたが、これは宮沢賢治らが大迫町を含む稗貫郡の地質を調査した報告書の中の一文です。岩手県は北上川の東と西で地質が大きく違い西は火山活動が今も続く奥羽山系です。東側の北上山地は非常に古い地質で大迫町は「南部北上帯」と呼ばれる地域に属します。栽培圃場の近くにはかつて石灰の切り出しが行われた場所もあります。気候的にも比較的雨が少なく、農民知事として今も親しまれている国分謙吉の「大迫の土地はボルドーに似ている」という着想は卓見であると思います。




栽培について


 葡萄の樹の仕立て方については、今まだ試行錯誤の段階ですが現時点ではいわゆる日本で一般的な平棚仕立てです。


 栽培上の大きなこだわりは除草剤と化学肥料を使わないことです。私は農薬を特に否定するものではありません。当地の防除基準に従っています。ただし、大迫は地域全体でブドウ栽培のエコファーマ認定を受けていますので農薬の散布回数や、使用方法は厳しく制限されています。


 まず、私が除草剤を嫌うのは、土の環境が大きく変わってしまうからです。除草剤で草が枯れると土は土壌生物にとって不適な環境となり固くしまってしまいます。土壌生物群と作物の関係はとても計り知れるものではないという思いを私は持っています。ですから、葡萄の樹が欲しているものを吸収できる環境としておくために除草剤の使用をしておりません。


 次に、化学肥料を使わないことですが、化学肥料についても私は特に否定しません。作物によっては使ったほうがいいと考えます。ただ、生育ステージや作物の状態をきちんと見定めないと難しいと考えています。私の性格からして、また、ワイン用のブドウ栽培という特殊性(収量が多ければ良い訳ではなくその個性が重要である点)からして使用する必要を感じないのです。


醸造について


 醸造は当地のエーデルワインさんに委託しています。

(エーデルワインのホームページ http://www.edelwein.co.jp )

  お願いしているのは唯一つ「素直にそのまま作ってほしい」ということです。そのため、「補糖、補酸」は行っていません。


ドメーヌイヅミの目指すワイン


 ワインは日本酒と同じように食事をよりおいしくいただくためのパートナーである食中酒です。

 ですから、食事に合わせて出過ぎないもの、そして、日本の食事に合うもの。刺身やてんぷらはもちろん、さんまの干物、とんかつなどにも。

 さらに蛇足をあえて冒して申しますと、盃でゆっくり飲んでいただきたいと思います。盃という食器が使われなくなって久しいと思います。ぐい飲みやグラスが一般的になっていますが、口径7センチ前後の薄い盃は口に当てて飲むとき自然に空気を伴い香りを引き立ててくれます。また、一杯の量は多くありませんから、食事が主で酒が従という関係が自然に成り立ちます。


「日本の料理をおいしくいただくワイン。」


これが私の目指すところです。